多数回のワクチン接種を行う医療機関に手厚い補助、特別の人員体制敷く病院でさらに補助を上乗せ―厚労省

2021.6.11.(金)

新型コロナウイルス感染症に係るワクチン接種体制を強化するために、多数回のワクチン接種(週当たり100回、150回、1日50回以上など)を集中的に(7月末までに4週以上)行う病院・クリニックに対し、手厚い人件費補助を行う―。

また、ワクチン接種体制強化のために特別の人員配置体制を敷いた病院については、補助の上乗せを行う―。

厚生労働省は6月10日に事務連絡「令和3年度新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業(医療分) の実施に当たっての取扱いについて」および「令和3年度新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業(医療分)の実施について」の一部改正についてを示し、こうした考えを明らかにしました。

都道府県による大規模ワクチン接種会場の設置・運営費用も補助

新型コロナウイルス感染症が依然として猛威を振るっています。緊急事態宣言の効果か、東京圏や大阪圏では新規感染者の増加ペースが落ち着いてきていますが、沖縄県などでは予断を許さない状況が続いています。こうした中では、やはり「感染防止策の徹底」と「医療提供体制の確保」が最重要施策となります。

前者の「感染防止策」については、これまでの▼マスクの着用▼手洗いの徹底▼3密(密接、密集、密着)の回避―を継続することはもちろん、「ワクチン接種」に大きな期待が集まっています。

ワクチン接種は、まず医療従事者から始まり、次いで「高齢者」「基礎疾患保有者」「その他の国民」という具合に、順次、拡大されていきます。すでに「医療従事者」「高齢者」へのワクチン接種が始まり、「若人」への接種準備も着々と進められています。

そうした中で、自治体などの準備する接種会場等では「ワクチンの打ち手となる医療従事者の確保」を始めとする接種体制の充実が重要テーマとなっており、医療機関や介護施設・事業所等に従事する医療従事者による「協力」にも期待が集まっています。厚労省は、こうした「協力」を積極的に促すために、例えば▼医療法上の臨時特例措置(各種の手続き等の柔軟化、関連記事はこちらこちらこちらほか)▼介護保険制度上の特例措置(人員配置基準の柔軟化など、関連記事はこちらこちらほか)▼緊急包括支援金による経済的支援(関連記事はこちら)▼診療報酬上の臨時特例の対象に追加(関連記事はこちら)―などを実施しています。

今般、さらなる「ワクチン接種体制の充実」を目指し、緊急包括支援金に「新たな補助メニュー」が設けられました。

新設されたのは「新型コロナウイルスワクチン接種体制支援事業」で、都道府県による接種会場設置などを支援するものです。もともと、医療従事者を除く一般国民へのワクチン接種は「市町村の事業」と位置付けられていましたが、都道府県による大規模接種などを後押しし、日本国全体としての接種率向上を目指すものと言えます。

まず、都道府県による「大規模接種」会場の設置等については、その設置費用(会場使用料や備品購入費)・運営費用(人件費、会場までの送迎費用など)の実費相当が補助されます。

同日に示されたQ&A(第4版)では、▼大規模接種会場で接種する医師等を都道府県が雇い上げることが可能である(補助対象となる)▼補助対象期間は「大規模接種会場を設置している期間」である▼自治体の裁量で「高齢者だけでなく、一般住民を対象にした大規模接種会場」を設けた場合も対象となる▼市町村は、本事業でなく「新型コロナウイルス ワクチン接種体制確保事業費補助金」を活用する―ことなどが明らかにされています。





また、新型コロナウイルスワクチンの「個別接種」に協力する医療機関に対して、次のように「接種回数」に応じた支援が行われます。より多くのワクチン接種を行う医療機関に手厚い支援を行うことで、接種促進を狙うものです。

【病院への支援】
(1)1日50 回以上の接種を行った場合
→1日当たり定額で10万円を交付する

(2)特別な接種体制(通常診療とは別に、接種のための特別な人員体制を確保した場合、休日、休診日、時間外、平日診療時間内の別を問わない)で、1日50回以上の接種を週1日以上達成する週が、7月末までに4週間以上ある場合
→(1)に加えて、▼医師:1人1時間当たり7550 円▼看護師等:1人1時間当たり2760 円?を追加で交付する(集団接種会場への医療従事者派遣と同額)

【クリニックへの支援】
(i)週100回以上の接種を、7月末までに4週間以上行った場合
→週100回以上の接種をした週における接種回数に対して回数当たり2000円を補助する

(ii)週150回以上の接種を、7月末までに4週間以上行った場合
→週150回以上の接種をした週における接種回数に対して回数当たり3000円を補助する

(iii)1日50回以上の接種を行った場合((1)(2)の要件を満たさない週の属する日に限定、(i)(ii)と(iii)の重複支援は行わない)
→1日当たり定額で10万円を交付する

医療機関への支援(病院・クリニックによる個別接種への支援)については、「都道府県の補助金交付事務に係る事務委託料・事務費」も対象となります。



同日に示されたQ&A(第4版)では、病院・クリニック共通事項として、▼都道府県・市町村による「別目的での支援」を受けることも可能(同一目的の補助を重複してはうけられない)▼1週の接種回数は「日曜日から土曜日」でカウントする▼1日の接種回数は「零時から24時」でカウントするが、24時を跨いで連続接種した場合には「24時以前の日付分」としてカウントする▼「予診のみ」は接種に含まれない(接種対策負担金の時間外・休日加算とは取扱いが異なる)?ことなどが示されました。

また病院への補助について、▼上記(2)の特別の接種体制を確保した場合の補助では、新型コロナウイルスワクチンの接種業務に従事していれば、事務職員も対象となる▼上記(2)の特別の接種体制を確保した場合の補助では、「1日50回以上の接種を行った日」の勤務時間のみが補助対象である(1日50回以上の接種を週1日以上達成する週が、7月末までに4週間以上ある場合に、1週間すべての勤務時間が補助されるわけではない)?ことが明示されました。

さらにクリニックへの補助について、▼例えば(i)で「週100回以上接種を4週以上達成した」場合でも、「達成できなかった」週は補助対象とならない▼高齢者以外への接種もカウントしてよい▼要件を満たせば1回目の接種から補助対象となる(「要件クリア後の接種」から補助対象となるわけではない)?ことなどが明らかにされています。



なお、4月30日に新設された補助メニュー「時間外・休日のワクチン接種会場への医療従事者派遣事業」(医師は1人1時間当たり7550円、それ以外の医療従事者は同じく2760円を上限に、派遣元医療機関に補助を行い、当該派遣スタッフへの処遇改善を行う)について、今般の新メニューと同じく「都道府県等の補助金交付事務に係る事務委託料・事務費も対象となる」ことが明らかにされています